いよいよ明日から日本公開となる映画『隣人たち』(原題:Mothers’ Instinct)。アン・ハサウェイとジェシカ・チャステインという、現代を代表する2大オスカー女優が共演するサイコスリラーとして、早くから注目を集めています。
一足先に公開された海外では、彼女たちの鬼気迫る演技や1960年代の美しい世界観が絶賛される一方で、物語の展開をめぐって賛否が分かれているという気になる情報も入ってきています。
この記事では、結末のネタバレは避けつつ、海外のリアルな口コミ・評価データ、撮影の裏話、そして本作が内包する「家父長制社会への皮肉」といった深いテーマまで、たっぷりボリュームで徹底解説します。鑑賞前の予習として、ぜひ最後までお読みください!
映画『隣人たち』の作品情報・あらすじ(ネタバレなし)
公開年:2024年
原題:Mothers’ Instinct
主演:アン・ハサウェイ、ジェシカ・チャステイン
【あらすじ】
舞台は1960年代のアメリカ郊外。綺麗に刈り込まれた芝生とパステルカラーのドレスが似合う美しいコミュニティで、隣同士に住む親友の主婦、セリーヌとアリス。完璧な日常を謳歌していたふたりでしたが、一方の息子の不慮の事故をきっかけに、その関係は疑念と狂気に染まっていきます。果たしてこれは妄想なのか、それとも復讐なのか……。

ここに注目!映画『隣人たち』3つの見どころと撮影裏話
① 2大オスカー女優の圧巻の「狂演」と極限の心理戦
本作最大の魅力は、なんといっても主演二人の演技合戦です。
2014年の映画『インターステラー』で共演したものの、同じシーンでの直接的な演技の応酬がなかった二人は、長年「しっかりとスクリーンで共演したい」と望んでいました。
本作では二人ともプロデューサーとして名を連ね、企画段階から作品づくりに深く関わっています。
ジェシカ・チャステインは本作を伝説的サイコスリラー『何がジェーンに起ったか?』に例えつつ、「私とアニー(ハサウェイ)がお互いを深く愛しているということ」が同作との違いだと語りました。
実生活での強固な信頼関係があったからこそ、精神を削るような疑心暗鬼を演じ切ることができたそうです。
一方、母親として最悪の恐怖に触れる役柄について、アン・ハサウェイは「これまで演じた中で最も難しい役だった」と語り、実生活でも母親である彼女にとって非常につらい題材であったため、一時は出演辞退も考えたといいます。
現場でのハサウェイは、精神的ダメージを防ぎ役との間に「防御層」を作るため、「撮影中は私のことをキャラクター名(セリーヌ)で呼んでほしい」と異例の要求をするほど没入していました。
② 1960年代のレトロで美しい世界観と衣装に隠された意味

劇中の美しく無菌的な「古き良きアメリカの理想郷」のイメージは、その裏側で進行するトラウマや狂気との間に、強烈でグロテスクなコントラストを生み出しています。
衣装デザイナーのミッチェル・トラヴァースによるデザインは、キャラクターの深層心理を雄弁に語っています。
セリーヌ(アン・ハサウェイ)の衣装は、伝統的で抑制されたスタイルを基調としており、当時の社会が女性に求めた「完璧な妻・母」というイメージを連想させます。
対照的にアリス(ジェシカ・チャステイン)の衣装は、より色彩が豊かで大胆なデザインが取り入れられ、彼女の独立心や社会の枠から踏み出そうとする意志を表現しています。
また、批評家の中には、セリーヌの端正な装いにジャクリーン・ケネディを、アリスの金髪と緊張感のある佇まいに、ヒッチコック監督の『鳥』などで知られるティッピ・ヘドレンを重ねる見方もあります。
③ クランクイン4日前の監督交代劇が生んだ「緊迫感」

実は本作、撮影開始の直前に大きなトラブルに見舞われていました。
当初監督を務める予定だったオリヴィエ・マッセ=ドゥパスが、クランクインのわずか4日前に個人的な事情で降板しました。
絶望的な状況の中、撮影監督として参加していたブノワ・ドゥロームが急遽監督に就任しました。
24日間という極端に短い撮影スケジュールを乗り切るため、ドゥローム監督は「各シーンの撮影は原則2テイクまで」という過酷なルールを敷きました。
ドゥローム監督は、この時間的制約によってキャストの集中力や直感的な反応が引き出され、女優たちの鋭利なパフォーマンスにつながったと振り返っています。
映画『隣人たち』海外の口コミ・リアルな評価は?
ここからは、海外の映画データベースやメディアのリアルな評価を見ていきましょう。本作は、批評家や観客によって評価が分かれています。

各種レビューサイトのスコアまとめ
Rotten Tomatoes(批評家):55%(賛否両論)
Rotten Tomatoes(観客):47%/同サイトに投稿した観客の支持は半数を下回っています。
Metacritic:48/100(賛否混在または平均的)/極端な高評価と低評価に分かれているというより、中間的な評価が大半を占めています。
IMDb:6.3/10(平均的)/傑作としての熱狂的評価には至っていないものの、一定の支持を集めています。
※各スコアは記事執筆時点のもので、今後変動する可能性があります。

【高評価】演技力とプロダクションデザインへの絶賛
海外の主要メディアが一致して称賛しているのは、主演二人のカリスマ性と豪華な美術です。
Empire誌:5つ星中4つ星の高評価を与え、「洗練された大人向けのスリラーは現在では珍しく、本作はその空白を見事に埋めている」と絶賛しました。
Vanity Fair誌:「演技はスケールが大きく魅力的であり、比較的低予算の映画にしては時代考証のスタイリングが豊かである」と娯楽性を高く評価しています。
IndieWire:アン・ハサウェイの演技について、何もできない人物にも、何でもやってのける人物にも見える危険な存在として、釘付けになるほど魅力的だと、その静かなる狂気を称賛しました。
【低評価】賛否が分かれる最大の理由「第3幕の急展開」
一方で、評価を押し下げている最大の要因は、物語のトーンの不均一さと、結末に至る「第3幕」の強引な展開です。
RogerEbert.com:批評家ブライアン・タレリコは、前半の重厚な「グリーフ(喪失)・ドラマ」から後半のヒッチコック的なサイコスリラーへの急旋回を指摘し、トーンが「混沌としている」と厳しく批判しました。
Variety誌:「偉大なメロドラマの壮大さも、優れたノワールの機知もない」と息苦しさを指摘しています。
Decider:ジョン・セルバは第3幕の展開を「収拾のつかない混乱」と痛烈に批判しました。現実的で痛切なヒューマンドラマを期待した観客ほど、後半の飛躍したサスペンス展開を「安っぽい昼ドラのようだ」と受け取り、落胆してしまったようです。
【深掘り考察】他サイトにはない2つのディープな視点
映画をさらに深く楽しむために、リサーチから見えてきた2つの重要な背景を解説します。
① 傑作ベルギー映画からのリメイクによる「光と影」

本作は、2018年に製作されたフランス・ベルギー合作映画『Duelles(英題:Mothers’ Instinct)』のハリウッドリメイクです。
オリジナル版は、ベルギーのアカデミー賞に相当するマグリット賞で、作品賞や監督賞を含む史上最多となる9部門を受賞した傑作です。
ハリウッド版は、世界的な映画スターであるアン・ハサウェイとジェシカ・チャステインを起用したことで、圧倒的な「スターパワー」と華やかな存在感を獲得しました。
物語や映像構成については、オリジナル版をかなり忠実に再現しており、一部の批評ではショット単位でも似ていると指摘されています。
一方で、主演二人の強い存在感や豪華な衣装によって、オリジナル版よりも華やかでハリウッド的な印象を受けるという見方もあります。
オリジナル版が97分、ハリウッド版が94分と上映時間も近いため、単純にサブプロットを大幅に削除した作品というよりは、同じ物語を異なる俳優と演出で再構築したリメイクとして捉えるのが適切でしょう。
② 単なるサイコスリラーではない?「家父長制社会」への痛烈な皮肉

ここからは、作品の描写をもとにした筆者独自の考察です。
海外の考察で頻繁に議論されているのが、「1960年代の家父長制社会における女性の抑圧」というテーマです。
アリス(ジェシカ・チャステイン)は、新聞社の仕事に戻ることを望む知的な女性ですが、不審な出来事に気づき疑問を訴えても、周囲から十分に信じてもらえません。
当時の社会では、女性の論理的な疑念や精神的な苦痛が、「女性特有のヒステリー」や「妄想」として扱われやすい状況がありました。
対照的にセリーヌ(アン・ハサウェイ)は、社会が期待する「悲劇に耐える慎ましい主婦」というイメージに重ねられやすい存在として描かれています。
作品は、女性が発する警告や違和感よりも、社会規範に沿った分かりやすい物語のほうが周囲に受け入れられやすい構造を浮かび上がらせます。
つまり本作は、「女性の声を封殺する家父長制の構造」が、人々の判断を鈍らせ、疑念や狂気が広がる土壌を生み出してしまうという、極めてブラックで皮肉に満ちた社会批評としても読み解くことができるのです。
まとめ|映画『隣人たち』はこんな人におすすめ!

海外の評価は確かに賛否両論ありますが、それは本作が「重厚なヒューマンドラマ」の顔をして始まりながら、終盤で「狂気のキャンピィ・スリラー(悪趣味な面白さを持つスリラー)」へと急変するからです。
以下のような方に、本作は強くおすすめできます!
- アン・ハサウェイ&ジェシカ・チャステインの極限の演技合戦を目撃したい人
- 1960年代の美しくレトロなファッションやインテリアが好きな人
- 女性の抑圧や社会構造の皮肉を描いた、奥深いサスペンスを考察したい人
「1960年代の抑圧された郊外を舞台に、現代最高峰の二大女優が狂気とエゴをぶつけ合う」という視点で見れば、これほど贅沢な映画体験はありません。
ぜひ明日からの公開にあわせて劇場へ足を運び、この結末の衝撃をご自身の目で確かめてみてください!

※本記事の情報は執筆時点のものです。最新情報や正確な詳細については、映画公式サイトなどもあわせてご確認ください。
